化粧品OEMの契約書で決めること|処方の持ち主・製造販売元を移すとき・最小ロット・資材・品質と回収・秘密保持
化粧品OEMの契約書は、OEM先(化粧品を作ってくれる会社)と自分の会社のあいだで、誰が何を持ち、誰が何を負担するかを決める書類です。化粧品では、法律上の責任を誰が負うかは「製造販売元」(化粧品を市場に出す責任を持つ会社)で決まりますが、処方や余った資材が誰のものか、回収の費用を誰が払うかは、契約で決めないと決まりません。
結論
- 処方の持ち主、製造販売元を移すときの段取り、余った容器や箱の持ち主の3つは、契約にサインする前に決めてください。あとから決めようとしても、話がまとまりにくい項目です。
- 回収の手続きは製造販売元が行いますが、費用を誰が払うかは、原因(中身・表示・広告や売り方)ごとに契約に書いておきます。
- 契約書の文は、国が公表している製造委託や秘密保持のひな形を下敷きにし、下のチェック項目が埋まっているかをOEM先の案と見比べてください。
契約書の案の見本:確かめるところ数字は仮
| 処方の権利 | 乙(OEM先)に帰属する | ① |
| 製造販売元 | 乙とする | ② |
| 最小ロット | 1回1,000個 | ③ |
| 資材 | 甲(自分)の負担で手配する | ④ |
| 回収 | 費用は協議の上決める | ⑤ |
| 秘密保持 | 契約の期間中 | ⑥ |
- ①OEM先のものなら、契約が終わると同じ中身はほかの工場で作れない。引き取りたいなら、対価と渡してもらう資料を書く
- ②あとで自分の会社に移すときの届出と、表示の切り替えの段取りを書く
- ③2回目以降も同じ数か。値段が変わる条件と、何か月前に注文するか
- ④余った容器や箱は誰のものか、どこに置くか、契約が終わったら誰が買い取るか
- ⑤「協議」だけでは決まらない。原因ごとに誰が払うかを書く
- ⑥契約が終わったあと何年守るか、終わったら資料を返すか捨てるか
製造販売元と契約書の関係
製造販売元をOEM先と自分のどちらが引き受けるかで、契約書に書くことが変わります。製造販売元を決める考え方は、自分のブランドの化粧品をOEMで作るときの許可で先に確かめてください。
化粧品の製造販売元には、品質を守るための国の決まり(GQP省令)がかかります。たとえば、作る会社で正しく作られたかを確かめて記録することや、品質の不良が分かったら回収などをすぐ行うことが、製造販売元の仕事として決められています。
製造販売元をどちらが引き受けるかで、契約書に足すことOEM先が製造販売元
- ・お客様からの肌の不調などの連絡を、何日以内に伝えるか
- ・回収になったとき、自分の会社が何をするか
- ・製造販売元を自分の会社に移すときの段取り
自分の会社が製造販売元
- ・OEM先が作り方を変えるときの事前の連絡
- ・作った記録や検査の結果を、いつ受け取るか
- ・自分の会社が工場を確かめに行けるか
自分の会社が製造販売元になる場合は、OEM先とのあいだで品質の取り決めを交わしておくことになります。どんな項目を取り決めるかは、「品質の取り決めと回収の費用」の章で確かめられます。
処方の持ち主
処方とは、化粧品の中身の配合(どの原料をどれだけ入れるか)のことです。国の知的財産の取引の指針では、レシピや成分表のように、特許などの権利として登録されていない情報を「ノウハウ」と呼んでいて、処方もその1つとして扱われます。
国が公表している製造委託の契約書のひな形では、契約の前からそれぞれが持っていた秘密の情報や知的財産権は、持っていた側のものとされています。なので、OEM先がもともと持っていた処方をもとに作る場合、何も決めなければ、その処方はOEM先のものになると考えておいてください。
処方について、契約の前に決めること- 1誰のものかOEM先のもとの処方を使うのか、自分の注文で新しく作るのか。新しく作った処方は誰のものか
- 2引き取るなら引き取る対価と、渡してもらう資料(配合表・原料の一覧・試験の方法など)を書く
- 3引き取らないなら同じ処方をほかの会社の商品にも使うかどうか。使わないでほしいなら、その期間を書く
処方を引き取りたいときは、最初の見積もりの段階で伝えてください。国の指針には、権利を譲る場合と譲らない場合の2通りの見積書を出し、権利の対価をはっきりさせている会社の例が載っていて、処方でも「引き取る場合」と「引き取らない場合」の2通りの見積もりを頼むと比べやすくなります。
反対に、あとから無償で配合を出してもらおうとするのは避けてください。指針には、取引先から、製品に使う化学物質の名前や配合の割合を一方的に開示させられた事例が載っています。そして、取引で立場の強い発注者が、正当な理由なく、設計図面やそのノウハウを無償で出させると、優越的地位の濫用として問題になるおそれがあるとされています。
製造販売元を移すとき
最初はOEM先に製造販売元を任せ、あとで自分の会社が許可を取って製造販売元になる、ということもあります。化粧品の届出は製造販売元の会社ごとに出すものなので、移すときは、新しい製造販売元が届出を出し直すことになります。
製造販売元をOEM先から自分の会社に移すときの流れ新しい製造販売元が届け出る品目ごとに、前もって都道府県知事へ製造販売届を出す
↓→容器や箱の表示を作り直す製造販売元の欄の名前と住所が変わる
↓→もとの製造販売元が中止を届け出るやめてから30日以内
容器には、製造販売業者の名前と住所を書く決まりがあります。なので、製造販売元が変わると、もとの名前で刷った容器や箱は、新しい製造販売元の商品には使えなくなります。
一方で、もとの製造販売元がすでに市場に出した商品は、そのまま売れます。国内の製造販売業者が市場に出した化粧品を売るだけなら、製造販売業などの許可は要らないからです。
製造販売元を移すときのために、契約に書いておくこと- 1資料を渡してもらう処方を引き取る約束をしているなら、配合表・原料の一覧・試験の方法をいつ渡すか
- 2もとの表示の在庫もとの製造販売元の名前で出荷された商品を、いつまで売るか
- 3刷った資材もとの名前で刷った容器や箱を、誰が負担して処分するか
最小ロットと再発注
最小ロットは、1回に頼める一番少ない数のことです。化粧品OEMの会社一覧に載っている9社のうち、最小ロットを公式サイトに書いている会社は6社で、そのうち2社は「経済ロット3000本から」「品種により変動」のような条件を添えていました。
表の下の2行は、生産にかかる期間を書いていた1社の記載です。最小ロットは品目や容器の種類で変わることがあるので、契約書では1回目の数だけでなく、2回目以降に頼める数と、そのときの値段の決め方も確かめてください。
2回目以降は1回目より早く作れても、注文してから届くまでには月単位の時間がかかります。売り切れる前に次を頼めるよう、何か月前までに注文すればよいかを契約に書いておくと安心です。
再発注について確かめること- 1数2回目以降の最小ロットは、1回目と同じか
- 2値段原料や容器の値上がりで値段を変えるときは、何日前に知らせるか
- 3時期何か月前までに注文すれば、いつ届くか
- 4使えなくなる原料原料や容器が手に入らなくなったとき、いつ知らせるか
余った容器や箱の持ち主
容器・箱・ラベルのような資材は、中身よりも多い数で作ることがあります。余った資材が誰のもので、どこに置き、誰が保管の費用を払うかは、契約で決めておかないと分かりません。
仮の例:中身は1,000個。箱は3,000枚単位で刷った仮の数字- 刷った箱
- 3,000枚
- 1回目に使う箱
- 1,000枚
余る箱2,000枚
※ 1枚50円なら、余った箱だけで10万円分になります。2回目を頼まないまま契約が終わると、この箱を誰が買い取るかでもめやすくなります。
※ 数字は、数え方を説明するための仮のものです。
また大阪府は、容器や箱などの資材は、届出が受け付けられたのを確かめてから準備するよう勧めています。届出の前に刷ってしまうと、販売名を変えることになったときに刷り直しになるので、資材を発注する時期も契約の段取りに入れておいてください。
資材について決めること- 1持ち主誰のお金で買った資材か。容器の型を特別に作るなら、型は誰のものか
- 2置き場所OEM先の倉庫に置くなら、保管の費用と、置いておける期間
- 3終わったとき契約が終わったら、余った資材を誰が買い取るか、誰が捨てるか
品質の取り決めと回収の費用
品質の取り決め
GQP省令は、医薬品については、製造販売元が作る会社と決まった項目を取り決めて、手順書に書くよう求めています(第7条)。一方で、化粧品に当てはめる条文(第19条)にはこの第7条が入っていないので、化粧品では、決まった形の取決め書が法律で求められているわけではありません。
ただし、化粧品の製造販売元も、作る会社で正しく作られたかを確かめ、回収のやり方などを手順書に書いておく必要があります。なので、自分の会社が製造販売元になるときは、医薬品で取り決める項目を手本に、次のことをOEM先と書面で決めておくと安心です。
- 作り方や試験のやり方を変えるとき、品質に響きそうなら前もって知らせる方法と責任者
- 製造の中止・回収・廃棄など、害を防ぐためにとった措置の知らせを、どう伝え合うか
- 作った記録と検査の結果を、どの商品の分から、いつ受け取るか
回収の費用
回収が必要になったら、市場に出した製造販売業者がすぐに対応するとされています。回収の手続きを行うのは製造販売元で、東京都の案内では、次の順に報告します。
回収になったときに製造販売元がする報告(東京都の案内)回収を決める回収を決めたら、すぐに都に報告する
↓→回収する回収の概要と、回収に着手した報告書を出す
↓→終わったら報告回収が終わったら、回収終了報告書を出す
↓→捨てたら報告回収した品を捨てたら、そのことも報告する
回収は、品質に問題が無くても起きます。厚生労働省の回収情報には、容器の表示で製造販売元を「製造元」と書き間違えた石鹸が、品質に問題は無いまま4,820個回収になった例が載っています。
回収になると、お客様への連絡、商品の送り返し、返金、捨てる費用、作り直しなど、いくつものお金がかかります。なので契約書には、原因ごとに誰が払うかを書いておいてください。
表示の書き間違いは、OEM先が表示の案を作り、自分の会社がそれを確かめて刷る、という分担になりやすい項目です。誰が最後に確かめたかを、表示の案のやりとりと一緒に残しておくと、費用の話がしやすくなります。広告で言える言い方は、化粧品の広告・販売ページで言えること/言えないことで確かめられます。
秘密保持
秘密保持は、OEM先の処方だけでなく、自分の会社の商品の企画やお客様の情報を守るための項目です。公正取引委員会・中小企業庁・特許庁は、知的財産の取引の指針と一緒に、秘密保持契約と「知的財産権等の取扱いに関する契約書(製造委託契約)」のひな形を公表しています。
国のひな形には、次のような項目が入っています。OEM先から出された契約書の案と見比べて、抜けている項目があれば足してもらってください。
- 契約の前からそれぞれが持っていた秘密の情報や知的財産権は、持っていた側のもの
- 契約が終わったら、受け取った秘密の情報を返すか捨てる
- 契約が終わったあとも、決めた年数は秘密を守る
また、国のひな形では、「秘密」と指定して、書面やメールなどで渡した情報を、守るべき秘密の情報としています。なので、商品の企画書やお客様の声のまとめをOEM先に渡すときは、資料に「秘密」と書いてから渡すと安心です。
会社一覧の9社のうち、公式サイトに契約書を交わしてから注文する流れを書いていた会社は1社、製造販売元を引き受けると明記していた会社は0社でした。契約書の案は、問い合わせの段階で早めに出してもらってください。
今日やること
- 1チェック項目を書き出す処方・製造販売元・最小ロットと再発注・資材・回収の費用・秘密保持の6つについて、自分の希望を1行ずつ書く
- 2契約書の案をもらうOEM先に「契約書の案と、品質の取り決めの案を、見積もりと一緒にいただけますか」と頼む
- 3処方の見積もりを2通り頼む「処方を引き取る場合と、引き取らない場合の2通りで見積もってください」と頼む