化粧品を作ったあとの品質管理と回収|苦情・肌の不調の連絡が来たときの流れ・国への報告の期限(15日・30日)・自主回収のクラス分けと報告・OEM先との分担
化粧品を売り始めたあとも、製造販売元(化粧品を市場に出す責任を持つ会社)は、品質と安全を見張り続けます。品質の見張り方を決めた国の決まりがGQP省令、売ったあとの安全の見張り方を決めた決まりがGVP省令で、化粧品の製造販売元はどちらも守ります。
なので、お客様から「においが変わった」「肌が赤くなった」と連絡が来たときに、誰が受けて、誰が判断し、国にいつ報告するかは、製造販売元を誰が引き受けているかで決まります。OEM先が製造販売元なら、自分の主な仕事は連絡を早く正確に伝えることで、自分が製造販売元なら、判断と国への報告まで自分の仕事です。
結論
- お客様から苦情や肌の不調の連絡が来たら、日時・製造番号・症状を記録して、すぐ製造販売元に伝えてください。国への報告の期限は、死亡なら15日以内、入院や治療に30日以上かかるような重い症例なら15日か30日以内で、製造販売元が知った日から数えます。
- 品質の不良で「効き目と安全に問題がない」とはっきり説明できなければ回収の対象になり、回収は基本的にクラスⅡとして扱われます。外箱に製造番号を書き忘れただけで、健康被害はまず考えられないとしてクラスⅢの回収になった例もあります。
- 会社一覧の9社のうち、苦情の受け付けの手順や回収への対応を公式サイトに書いていた会社は0社だったので、連絡の窓口・期限・回収の分担は契約の前に聞いて決めてください。
お客様から連絡が来てからの流れ製造販売元が検討する原因を調べ、回収などの措置を決める
↓→
製造販売元の中の流れ
品質の決まり(GQP省令)では、化粧品の製造販売元は、品質の情報を得たら、人の健康への影響を評価し、原因を調べ、改善が要るなら手を打って記録することになっています。さらに、品質の情報のうち安全の確保に関わるものは、安全管理責任者にすぐ文書で渡すことも決まっています。
安全の決まり(GVP省令)では、化粧品の製造販売業者は「第三種製造販売業者」に当たるとされ、化粧品の会社にも、情報の収集・検討・措置の条文(第6条〜第9条)が当てはまることになっています。つまり、製造販売元は、集めた安全に関わる情報をすぐに検討して、その結果を記録することが求められます。
製造販売元の中での情報の流れ(GQP省令・GVP省令)品質の情報健康への影響を評価し、原因を調べて記録する
↓→安全に関わる情報安全管理責任者に文書で渡し、すぐ検討する
↓→措置の案を立てる回収・販売の停止・注意事項の変更・国への報告など
↓→
GVP省令では、検討の結果、必要なら、廃棄・回収・販売の停止・注意事項の変更・国への報告などの措置を立てることになっていて、措置の案を評価して、どうするかを決めるのは総括製造販売責任者です。3人の責任者(総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者)の決め方と、手順書に書くことは、化粧品製造販売業の許可を自分で取る段取りで確かめられます。
苦情・肌の不調の連絡の受け方
販売ページやサロンで自分が売っているなら、お客様からの連絡を最初に受けるのが自分になることもあります。製造販売元が原因を調べ、国に報告するかを決めるには、最初に受けた人の記録が手がかりになるので、次の項目を聞いて残してください。
お客様からの連絡の記録の見本(例)数字は仮
| 受けた日時 | 2027年5月10日 14時 | ① |
| 商品名と製造番号 | 〇〇 モイストローション L7041 | ② |
| 連絡の中身 | 使って2日後に頬が赤くなった | ③ |
| 病院にかかったか | 皮膚科にかかり、薬をもらった | ④ |
| 連絡のあった品 | 使いかけを送ってもらえる | ⑤ |
- ①製造販売元に伝えた日時も、横に書いておく
- ②製造番号から、同じロットの在庫と出荷先をたどれる
- ③いつから、どこに、どんな症状かを、お客様の言葉のまま書く
- ④入院や、治療に30日以上かかる場合は、国への報告の対象になる
- ⑤原因を調べるのに使うので、捨てずに送ってもらうよう頼む
連絡のあった品を調べて、回収になった例もあります。厚生労働省の回収情報には、社内の検査に合格して出荷した口に使う化粧品で、お客様からの変色の苦情をきっかけに社内基準を超える細菌が見つかり、クラスⅡの回収になった例が載っています。
なので、「においが変」「色が違う」のような品質の苦情も、肌の不調の連絡と同じように記録し、製造番号を添えて製造販売元に伝えてください。肌への試験と、販売前に製造販売元が確かめることは、化粧品の肌への安全性の試験で確かめられます。
国への報告の期限
化粧品の製造販売元は、法律(薬機法)で、副作用などによると疑われる病気・障害・死亡の発生などを知ったら、国の決まりに沿って厚生労働大臣に報告することになっています。期限は国の決まり(施行規則)で、次のように分かれています。
ここでいう重い症例は、障害、治療のための入院(入院が長引く場合を含む)、治療に30日以上かかる症例などです。「予測できない」とは、容器や説明書に書いた使用上の注意から予測できない、という意味で、予測できる症例でも、起き方の傾向が変わった場合などは15日の対象になります。
期限は、製造販売元がその事実を知った日から数えます。なので、OEM先が製造販売元なら、自分のところで連絡を止めておくほど、OEM先が調べて報告するための日数が減ります。
自主回収のクラス分け
回収するかどうかは、製造販売元が判断します。東京都の案内では、品質の不良について、効き目と安全に問題がないとはっきり説明できなければ回収の対象とされ、法律に違反する化粧品(表示の間違いなど)も回収の対象とされています。
さらに、不良がそのロットや製品全体に及ばないとはっきり説明できなければ、回収の対象とされているので、原因がはっきりしないうちは、問題が見つかった1本だけでなく、同じロット全体が回収の範囲に入ることがあります。そして、回収をするか、しないかを決めるのは総括製造販売責任者です。
回収になると、健康への危険の大きさで、3つのクラスに分けます。国の回収の通知では、回収は基本的にクラスⅡと考え、健康被害の原因にならないとはっきり言える理由があればクラスⅢ、より重い健康被害のおそれがあればクラスⅠにするとされています。
回収のクラス分け(国の回収の通知・東京都の案内・厚生労働省の回収情報)クラスⅠ
- ・使うと、重い健康被害や死亡の原因になりうる
- ・回収の概要に加えて、報道発表用の資料も作る
クラスⅡ
- ・使うと、一時的な、または治せる健康被害の原因になる可能性がある。重い健康被害のおそれはまず考えられない
- ・例:においの変化から菌が見つかった美容液
クラスⅢ
- ・使っても、健康被害の原因になるとはまず考えられない
- ・例:外箱に製造番号を書き忘れた化粧品
クラスⅡの美容液は、令和4年12月に出荷され、令和5年12月に4,538個の回収が始まりました。この会社は、出荷先と数量をすべて把握していたので、文書で回収を知らせたとしています。
クラスⅢの例は、品質に問題が無くても、外箱の製造番号の書き忘れだけで52万本がクラスⅢの回収になったものです。製造番号の付け方と、容器と外箱に同じ番号を入れる段取りは、化粧品の使用期限の表示と品質の保証で確かめられます。
回収の報告の流れ
法律(薬機法)では、回収するときは、回収に着手したことと回収の状況を報告することになっています。報告することと順番は、国の決まり(施行規則)と東京都の案内では、次のとおりです。
回収を決めてから終わるまで(施行規則と東京都の案内)- 1回収を決める総括製造販売責任者が、回収するかどうかとクラスを決める
- 2着手を報告する回収に着手したらすぐに、対象の数量と製造番号、回収の方法、終わる予定日などを報告する
- 3回収の概要が載る「回収の概要」は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページの「回収情報」に載る
- 4終わったら報告する回収が終わったら、すぐに終わったことを報告する。回収終了報告書には、回収の結果と、再発を防ぐために社内でとった措置を書く
回収の途中でも、回収に着手したときには想定していなかった健康被害のおそれを知ったときは、その内容を報告します。また東京都の案内では、回収した品は、自分の判断で捨てたり送り返したりする前に、都の担当に連絡することになっています。
報告の窓口は、東京都の案内では都の担当課です。ほかの道府県で許可を受けている場合は、許可を受けた道府県の薬務課(薬や化粧品の許可の窓口)に、報告先と様式を確かめてください。
回収で誰が何の費用を払うかは、原因(中身・表示・広告)ごとに契約で決めておけます。書き方は、化粧品OEMの契約書で決めることで確かめられます。
OEM先との分担
東京都の案内では、回収にすぐ対応できるよう、品質の情報をすぐ連絡する方法と責任者、安全の情報の担当者と連絡の期限を、前もってはっきり決めておくことが必要だとしています。OEMで作るときは、この「連絡の方法・責任者・期限」を、製造販売元を誰が引き受けるかに合わせて決めておきます。
製造販売元が誰かで変わる分担OEM先が製造販売元
- ・連絡を受けたら、決めた期限と方法でOEM先に伝える
- ・国への報告と回収の判断は、OEM先の総括製造販売責任者
- ・回収のお知らせを、自分のお客様にどう届けるかを決めておく
自分が製造販売元
- ・判断・国への報告・回収の手続きは、自分の会社
- ・OEM先から、作った記録と検査の結果を受け取る
- ・OEM先で品質の問題が見つかったら、すぐ知らせてもらう
どちらの形でも、回収になったときに対象のお客様へ確実に知らせるには、ロットごとの出荷先の記録が要ります。品質の決まりでは、製造販売元が市場への出荷の記録を作る手順を手順書に書くことになっているので、自分で発送しているなら、自分の出荷の記録をどう渡すかも決めておいてください。
製造販売元を誰が引き受けるかの決め方は、自分のブランドの化粧品をOEMで作るときの許可で確かめられます。
9社の公式サイトの記載
化粧品OEMの会社一覧に載っている9社の公式サイトを、2026年10月18日に1社ずつ読み、トップ・OEMの案内・流れ・Q&A・工場・品質保証のページで、売ったあとの品質管理について何を書いているかを数えました。
会社一覧の9社の公式サイトで「品質管理と回収」を確かめた結果
- 化粧品製造販売業の許可を書いている会社:6社。ただし、製造販売元を引き受けると明記していた会社は0社でした
- 化粧品の製造でISO22716(化粧品の製造管理の国際規格)に沿っていると書いている会社:1社
- 検査や出荷判定をOEMの工程に書いている会社:4社
- 品質の問題やお客様の指摘があったときに調べて対応すると書いている会社:2社
- 製品の回収への対応を書いている会社:0社。売ったあとの安全管理を書いている会社:0社
品質管理の体制は多くの会社が書いていましたが、苦情を受けたときの連絡や回収の分担は、どの会社も公式サイトに書いていませんでした。なので、候補の会社には次の文面で聞き、答えを並べて比べてください。
候補を3社に絞る手順は、化粧品OEMの会社の選び方で確かめられます。
OEM先に聞くこと
発売後の品質の連絡と回収の分担について聞くメールの見本数字は仮
| 件名 | 発売後の品質の連絡と回収の分担について(〇〇サロン) | |
| 製造販売元 | 製造販売元は御社で、総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者はどなたですか | ① |
| 連絡の窓口 | お客様から苦情や肌の不調の連絡が来たら、どなたに、何日以内に、何で伝えればよいですか | ② |
| 記録の様式 | 伝える項目の様式(日時・製造番号・症状・病院にかかったか)はありますか | ③ |
| 回収の分担 | 回収になったら、お客様へのお知らせと品物の引き取りは、どちらがしますか | ④ |
| 出荷の記録 | ロットごとの出荷先と数量の記録は、どちらが持ちますか | ⑤ |
- ①国への報告と回収を決めるのは、製造販売元の総括製造販売責任者
- ②国への報告の期限は、製造販売元が知った日から数える。死亡は15日以内
- ③製造番号があると、同じロットの出荷先をたどれる
- ④回収の費用を誰が払うかは、契約書で原因ごとに決める
- ⑤美容液の回収の例では、出荷先と数量を全部把握していたので、文書で回収を知らせていた
返事が「品質管理はしっかりしています」だけなら、連絡を受ける担当者の名前と、伝える期限を聞き返してください。
今日やること
- 1窓口を決めるお客様からの苦情や肌の不調の連絡を受ける人と、記録の様式(日時・製造番号・症状・病院にかかったか)を決める
- 2OEM先に聞く「苦情や肌の不調の連絡は、どなたに何日以内に伝えればよいですか。回収になったときの分担も教えてください」と送る
- 3出荷の記録をそろえるロットごとに、どこへ何個出したかを残す仕組みを確かめる