化粧品の法律(薬機法)でいう「製造」は、工場で中身を作ることだけを指す言葉ではありません。できあがった化粧品を小さい容器に分ける、別の容器に詰め替える、ラベルを貼る、箱に入れる、出荷してよいと決まる前の品を保管する、といった作業も、法律ではすべて「製造」に入ります。
なので、美容室やエステで業務用のシャンプーを小瓶に分けてお客さんに渡したり、クリニックで化粧品を混ぜて渡したりすることは、店の人が「作った」つもりがなくても、法律の上では化粧品を製造したことになります。
結論
- 仕入れた化粧品を、そのまま売る・施術で使うことは、許可なしでできます。これは法律では「小売」と「使用」であって、製造ではありません。
- 小分け・詰め替え・混ぜる・ラベルの貼り替えは、1個でも、無料で渡す分でも「製造」です。製造業の許可がある工場の外ではできず、許可なしで作ったものは売ることも渡すこともできません。
- 自分の店やクリニックの名前の化粧品を出したいなら、中身づくりから小分け・ラベル貼りまでをOEM先に頼み、自分は仕入れて売る立場に立ってください。会社一覧の9社のうち、最小ロットを公式サイトに書いている会社は6社、100個から頼めると書いている会社は2社でした。
許可なしでできること
- 仕入れた化粧品を、容器を開けずにそのまま売る
- 仕入れた化粧品を、施術でお客さんの肌や髪に使う
- 詰め替え用の化粧品を売り、お客さんが自分で詰める
許可がないとできないこと
- 業務用のボトルから小瓶に分けて、売る・渡す
- 詰め替え用の中身を、店で容器に詰めて渡す
- 2つの化粧品を混ぜて、売る・渡す
- 自分の店のラベルを貼る、ラベルを貼り替える
- 試供品として、小分けしたものを無料で渡す
法律の「製造」の広さ
法律は、「製造」には小分けが含まれると、条文の中ではっきり書いています。都道府県の手引きは、製造に当たる作業を原料を混ぜる、容器に詰める、表示のラベルを貼る、出荷してよいと決まる前の製品を保管することだと説明しています。
製造業の許可は、工場(製造所)ごとに、する作業の範囲に合わせた区分で出ます。化粧品の区分は2つです。
| 作業 | 要る許可の区分 |
|---|---|
| 中身を作る・混ぜる | 一般区分 |
| 容器に詰める・小分け | 一般区分 |
| ラベルを貼る | 包装・表示・保管区分 |
| 箱に入れる | 包装・表示・保管区分 |
| 出荷前の保管 | 包装・表示・保管区分 |
「一般区分」は化粧品の製造工程の全部か一部を行うもので、「包装・表示・保管区分」は化粧品の製造工程のうち、包装・表示・保管だけを行うものです。和歌山県の手引きは、容器に中身を詰める作業(一次包装)をするなら、一般区分の許可が要るとしていて、京都府の資料も同じことを書いています。なので、容器に中身を詰める作業は、ラベル貼りや箱入れよりも重い区分の許可が要る作業です。
また、化粧品を自分の商品として市場に出す側には、製造業とは別に「化粧品製造販売業」の許可が要ります。京都府の資料によると、製造販売業の許可だけでは、ラベルの変更などの製造行為はできないので、2つの許可は別々の仕事に対して出ていると考えてください。2つの許可の違いは、自分のブランドの化粧品をOEMで作るときの許可で確かめられます。
店でよくある5つの場面
美容室・エステ・クリニックでよくある場面を、法律と手引きの言葉に当てはめると次のとおりです。
| 店ですること | 法律の上では |
|---|---|
| 小瓶に分けて売る | 小分け=製造 |
| 詰め替えて渡す | 容器に詰める=製造 |
| 混ぜて渡す | 中身を作る=製造 |
| 店のラベルを貼る | 表示=製造 |
| 試供品を無料で渡す | 授与=対象 |
1行目と2行目は、容器に中身を詰める作業なので、一般区分の許可がある工場でしかできません。4行目について、沖縄県の案内は、決まった表示を製品に貼る作業は「表示」に含まれると説明し、鹿児島県の案内は、輸入した製品の表示を日本語の表示に貼り替える作業も「表示」に含まれると添えています。たとえば仕入れたシャンプーの表示の上に自分の店の名前のシールを貼ることも、法律の上では「表示」という製造の作業です。
一方で、容器を開けずにそのまま売ることは「小売」です。和歌山県の手引きは、ほかの会社が市場に出した化粧品を仕入れて売ることは「小売」で、許可は要らないと書いています。詰め替え用の化粧品をそのまま売り、お客さんが家で自分の容器に詰めるなら、店は小売をしただけで、詰めるのはお客さん自身なので、店が製造をしたことにはなりません。
無料・少量でも変わらない
「売っていないから」「少しだけだから」は、法律の上では理由になりません。無許可で作った化粧品について、都道府県は次のように説明しています。
| すること | 規制の対象か |
|---|---|
| 自分で作って自分で使う | 対象外 |
| 作ってプレゼントする | 対象 |
| バザー・ネットで売る | 対象 |
| 少しだけ作る | 対象 |
広島県は、自分で作って自分で使うだけなら、薬機法の規制の対象外と説明しています。ただし同じ案内で、お金を取らないプレゼントでも、規制の対象とし、バザー・ネット販売・景品として渡すことも、規制の対象としています。三重県も、作る量が少なくても、規制の対象と書いています。
宮城県は、無許可の例として自宅で作った化粧品をネットやフリーマーケットで売る、ほかの人にプレゼントすることを挙げ、許可なしで作ったものを、ほかの人に売ること・無料で渡すことはできないと念を押しています。なので、「お得意さんだけに」「サンプルとして」小分けして渡す場合も、売るのと同じ扱いになります。また、佐賀県の案内のとおり、無許可で作った化粧品と、決まった表示の無い化粧品は、売ることも渡すこともできないので、法律で決まった表示のない小瓶を渡すことも、それだけで問題になります。
「量り売り」という言い方について
お客さんの注文を受けてから、その場で量って容器に詰める売り方を「分割販売」と呼び、小分けとは別に扱う説明が、ネット上には多くあります。ただし、その根拠として挙げられている1992年(平成4年)の国の事務連絡は、国や都道府県のサイトで原文を確かめられませんでした。
国の資料で確かめられるのは、薬局が医薬品を量り売りする場面について、不特定の人に売るために前もって分けておくことは、分割販売ではなく小分け製造という考え方です。これは医薬品の話で、化粧品にそのまま当てはまると書かれたものではありません。
施術で使うときの扱い
仕入れた化粧品を、施術の中でお客さんの肌や髪に使うことは、化粧品を「売る」ことでも「渡す」ことでもありません。法律が許可を求めているのは、業として製造すること、業として製造販売(売る・渡す)することなので、仕入れたものを容器から出してそのまま使う場面は、どちらにも当たりません。
ただし、店で混ぜる・小分けするという作業が入ると、話が変わります。
そのまま使う
- 仕入れた容器から出して、そのまま肌や髪に使う
- 使ったあと、お客さんには何も渡さない
- 法律の上では「使用」で、製造でも販売でもない
混ぜる・小分けして使う
- 2つの化粧品を店で混ぜて使う
- 大きなボトルから店の小瓶に移して使う
- 施術にだけ使うなら製造に当たるかは、都道府県の手引きには書かれていない
- 混ぜたもの・小分けしたものをお客さんに渡した時点で、製造したものを授与したことになる
施術用に店で混ぜたり小分けしたりすることについて、今回開いた都道府県の手引きには、当たる・当たらないのどちらも書かれていませんでした。なので、施術用のボトルに移し替えて使っている店は、そのやり方を薬務課に聞いてください。
一方で、混ぜたもの・小分けしたものをお客さんに渡すことは、はっきり製造と授与に当たります。「施術の続きを家でもできるように」と小瓶に入れて渡す形は、やめてください。
クリニックの院内製剤との違い
病院や診療所には、医師の判断で薬を調製して自分の患者に使う「院内製剤」という仕組みがあります。日本病院薬剤師会の指針は、院内製剤は、医療法のもとで、医療機関の責任で、院内で調製して使うものと説明しています。これは医薬品の話で、しかも医療機関の中で使うことが前提です。
院内製剤(医薬品)
- 医療法のもとで、医療機関の責任で調製して使う
- 院内製剤が出回る範囲は、その医療機関の中だけ
- クラスⅠ・Ⅱの院内製剤は、患者に費用を請求しないのが原則
- 医師の処方のもとで患者に使う
院内で作る化粧品
- 薬機法の「化粧品」で、治療の薬ではない
- 患者に売る・渡すなら、製造販売(市場に出すこと)
- 混ぜる・詰める・ラベルを貼るのは製造
- 製造業と製造販売業の許可が無いクリニックではできない
指針が例に挙げるのは、薬を出す準備として2つ以上の医薬品を混ぜておくこと(軟膏の混合など)といった、薬を出すための作業です。クリニックの名前で化粧水やクリームを作って患者に売ることは、医療のための院内製剤ではなく、化粧品を市場に出す仕事です。なので、「医師だから院内で化粧品を作ってよい」ということにはなりません。
クリニックの名前の化粧品(ドクターズコスメ)を出したいときは、OEM先に製造販売元を任せて作ってもらい、クリニックは仕入れて売る形にしてください。医師の名前や写真を広告に使うときの決まりは、化粧品の広告・販売ページで言えること/言えないことの「医師・美容師のコメント」で確かめられます。
罰則と、渡せなくなるもの
無許可の製造と製造販売には、法律で罰則が決まっています。
| 違反 | 罰則 |
|---|---|
| 許可なしで製造販売 | 3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(両方のこともある) |
| 許可なしで製造 | 1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(両方のこともある) |
罰則とは別に、無許可で作った化粧品は、作った時点で売ることも渡すこともできない品になります。宮城県の案内では、許可を得ずに製造したものを、他の人に売ることも無償でプレゼントすることもできないとされています。小分けした小瓶が店の棚に残っていても、あとから正しいルートに戻す方法はありません。
OEMに頼む線引き
自分の店やクリニックの名前の化粧品を出したいなら、中身づくりだけでなく、容器に詰める・ラベルを貼る・箱に入れるところまでをOEM先に頼み、自分は「仕入れて売る」立場に立ちます。この形なら、店の側に製造業・製造販売業の許可は要りません。
化粧品OEMの会社一覧に載っている9社の公式サイトを読んで数えると、次のとおりでした。
- 最小ロット(1回に頼める一番少ない数)を書いている会社:6社
- 100個か100本から頼めると書いている会社:2社
- 箱詰めやラベル貼りまで引き受けると書いている会社:4社
- 試作(ためしに作るサンプル)は基本的に無料と書いている会社:3社
店で小分けしたい理由が「少しだけ欲しいお客さんがいる」なら、OEM先に小さい容量の品や試供品の形で作ってもらうのが、法律に合ったやり方です。容器の大きさや資材の手配は、化粧品の容器・箱・ラベルの選び方で確かめられます。サロンの名前のシャンプーやトリートメントで言える効き目と、美容師の推薦を広告に書けない決まりは、シャンプー・ヘアケアをOEMで作るときで確かめられます。
今日やること
- 1店で今していることを書き出す小分け・詰め替え・混ぜる・ラベル貼り・無料で渡すの5つについて、していることと、誰に渡しているかを紙に書く
- 2薬務課に聞く店のある都道府県の薬務課に「仕入れた化粧品を施術用に小瓶に移して使っています。これは製造に当たりますか」と聞く
- 3OEM先に聞く化粧品OEMの会社一覧から2〜3社を選び、「小さい容量の品や試供品を、ラベル貼りまで含めて、最小何個から作れますか」と聞く